「アダプト・プログラム・シンポジウム2006」について
■急速に伸びる「アダプト・プログラム」
1985年、アメリカのテキサス州で「アダプト・ア・ハイウェイ」というユニークな取り組みが始まりました。一定区画のハイウェイの清掃・美化を“地元の市民や企業・団体が行い”、“行政がその活動を支援する新しい取り組み”として、大きな注目を集め、全米に、そしてハイウェイ以外の公共スペースにも広がりました。
“アダプト”(ADOPT)とは英語で「○○を養子にする」という意味。公共のスペースを「養子」にみたて、市民や企業・団体が「里親」となり、これを養子のように愛情を持って清掃・美化する。行政は清掃用具の提供やサインボードの設置など、市民の活動を支援する。これが「アダプト・プログラム」の基本的な仕組みです。
日本では1998年6月に徳島県神山町で導入され、以降急速に各地に波及し、2006年9月現在、全国で300の自治体が導入し、約10,000団体の市民が活動に参加するまでになりました。
いま、多くの自治体で「ポイ捨て防止条例」の制定をはじめとする様々な散乱対策が採用されてはいるものの、なかなか十分な成果が現れず、実効があがる具体策が求められています。この中にあって「アダプト・プログラム」の多面的な効果、すなわち「まち美化の実効」と「ポイ捨て防止などの啓発効果」、そして「まちづくり意識の高揚効果」などが認められ、北海道から九州にいたる全国に急速に普及しつつあります。
行政と市民のパートナーシップの重要性がますます高まる中、パートナーシップに基づく新しいまち美化手法「アダプト・プログラム」は今後もさらに普及するものと考えています。
■アダプト・プログラム・シンポジウム2006
ビール、清涼飲料など飲料メーカー団体6団体が構成する、社団法人食品容器環境美化協会(略称:食環協)は、環境美化推進事業の一環として、1998年から、「アダプト・プログラムの普及推進」に積極的に取り組んでいます(食環協の事業概要については後記をご参照ください)。
「アダプト・プログラム・シンポジウム」は、年に1回の実践的な情報交換の場として1999年から毎年実施していますが、8回目となる今回は、11月9日(木)に品川プリンスホテル(東京都・品川区)で開催し、全国の自治体担当者はじめ多くの関係者が約160名が参加しました。
第一部では、元上越市環境副市長で、現在、環境、人権、行政など幅広い分野で活躍されている環境ジャーナリストの村田佳寿子さんを講師に迎え、『環境にやさしい協働のまちづくり』をテーマに基調講演を行いました。
村田佳寿子さんが新潟県上越市環境副市長に就任中、新潟港に風力発電建設の提案をしたところ、市民からは猛反対の声が。反対の理由の一つに、当時大型風車の設置を計画していたエリアには、県内外から持ち込まれた大量のゴミが捨てられていたことがあり、住民にとってはこの方が重大問題でした。これが村田さんにとって協働でのまちつくりの第一歩に。
市民と話し合いを繰り返す中で、“地球環境パトロール制度”を考案。これは、“市民生活を根底から支える、なくてはならない素晴らしい仕事なんだ”という自覚と、楽しみながら格好よく活動できるシステムにしよう、ということで考え付いた制度です。スタッフがお揃いの制服を着てゴミ拾いを颯爽とやる、東京ディズニーランドのシーンをイメージしたものとのこと。遠くからでも目立つブルーの制服、腕章、帽子を作り、参加者には市が認定した一定の権限を持たせ、またこの制度を市民に広く知らせました。その結果、当時13万4,000人いた市民全員一致で風力発電建設の許可をもらうことができたそうです。協働でまちをつくるということは、“自分たちのまちは自分たちで守る”意識をつくることだと語りました。
行政の仕事は人としての喜び、人間としての誇りがないと続かないもの。「市民が主体となり、行政がサポートして地球環境に貢献するアダプト・プログラム制度は、各地域に合ったさまざまな運用が可能な制度ですが、地域との連携が大切。市役所の職員も市民なのだという感覚を持ち、必ず地域を活性化するんだ、という強い気持ちで取り組んで欲しい。市民と行政の信頼関係ができてからこそ、共同作業がはじまるのだ」と感想を述べました。
第二部では、「アダプト・プログラム」の先進的な取組み事例として、「中海アダプト・プログラム」「(札幌市)中央区道路アダプト制度」「(山形県)ふるさとの川アダプト制度」の三つの事例を紹介しました。
中海アダプト・プログラムの特徴:
鳥取市のCATV局・中海(ちゅうかい)テレビ放送が事務局となり、鳥取県・島根県にまたがる中海(なかうみ)で展開しているアダプト・プログラム。行政と連携しつつ、マスメディアの機能をフルに発揮し成果をあげている。全国唯一、民間マスメディアが推進窓口を担っている事例。
(札幌市)中央区道路アダプト制度の特徴:
大都市中心部において、「清掃活動」はもとより、「花植え」「違法広告物撤去」「違法貼り紙剥がし」「放置自転車整理」など、多様なアダプト活動を展開。そのための庁内および外部の関連部署・関連機関との調整も多岐にわたる。活動の成果および関連部門間調整の実態にポイントをあてた事例紹介。
(山形県)ふるさとの川アダプト制度の特徴:
県が管理する河川・海岸を対象とする広域展開。登録人員13千人の大規模展開。その「制度運用」および「里親活動の活性化」に向けた、効果的な取り組みを紹介する。アダプト・プログラムからスタートし、近未来には、市民農園(ふるさと水辺の菜園)への展開構想も合わせて紹介。
最後に、食環協から、全体のまとめをかねて、同協会が実施した全国自治体アンケートの結果に立脚した、「アダプト・プログラム」の全国概況を説明すると共に、アダプト・プログラム発祥の地であるアメリカのアダプト・プログラムの実態調査の結果についてもご報告しました。
社団法人食品容器環境美化協会(食環協)
TEL.03-5439-5121
ホームページhttp://www.kankyobika.or.jp/